1988年、世界的にも有名なフランスの「ル・ピディフ野外劇」から火種をもらい、国の特別遺跡「五稜郭」を舞台に、ダイナミックな函館地方の歴史を題材とする「NPO市民創作野外劇」の会の公演も今年で25年目となった。この間、多数の市民ボランティアが参加する国内最大規模の市民創作野外劇に成長し、数々の受賞とともに「歴史とロマンの街・函館」にふさわしい地域文化活動と新しい観光資源として全国的にも高く評価されている。
|
フィリップ・グロード神父 |
提唱者は、現在、全国にも有名な高齢者施設「旭ヶ岡の家」の理事長フィリップ・グロード神父である。
五稜郭商店街活性化へのアドバイスを求められた際、「函館でも五稜郭のすばらしいロケーションを活かし、函館地方のダイナミックな歴史をテーマに野外劇を始めてはどうか。
私の故郷では、古い古城と前庭の池をつかってバンディの歴史を主題にした野外劇をスタートさせ、地域おこしに大いに貢献している。直接活性化策に結びつかなかったとしても、五稜郭地区のイメージアップには役に立つはずだ」と。
この提唱に商店街関係者をはじめ市民有志がル・ピディフ野外劇を視察して刺激を受け、2年後の1988年夏、第一回目の市民創作野外劇がスタートしたのである。
この野外劇の特色は、五稜郭の優れたロケーションを舞台として活用できること、また、題材が史実に基づいており、観光客にも内容を容易に理解してもらえることである。
縄文の時代に始まり、戦争や大火などの度重なる困難に見舞われながらも、それを乗り越えてきた函館人のたくましさと函館の発展にも力を尽くした高田屋嘉兵衛の活躍、ペリー来航による開港と国際文化の波、武田斐三郎による西洋式築城五稜郭の完成、蝦夷共和国を夢みて戦った榎本武揚や土方歳三らの命かけて信念を貫こうとした姿や歌人石川啄木などの函館の街を精一杯生き抜いた人々の物語が約10の場面で繰り広げられる。
毎回市民の参加者はおよそ250人で、出演者はおよそ200人、演出スタッフ、衣装、受付などの裏方あわせて50人ほどである。衣装は1000着用意され、出演者はおおむね3役こなす。
これら各スタッフを含めて出演者は事務局の一部パートを除き、すべてボランティアであり、これが最大の特徴である。
こうしたボランティア学習実験実践の場として高く評価されている。
主な受賞歴
- 1987年・・・ル・ピディフ(仏)野外劇財団と姉妹提携
- 1990年・・・函館の歴史的風土を考える会「歴風文化賞」
- 1991年・・・国土庁全国地域づくり表彰「国土庁長官賞」
- 1991年・・・北海道教育委員会「生涯学習のまちづくり100選賞」
- 1992年・・・笹川日仏財団交際交助成採択団体
- 1993年・・・サントリー財団「地域文化賞」
- 1994年・・・北海道地域づくり優良事例「知事賞」
- 1994年・・・あしたの日本を創る協会「ふるさとづくり奨励賞」
- 1997年・・・北海道ふるさとフェスタ97実行委員会「あすのふるさと大賞」
- 1997年・・・読売新聞社「97北のくらし大賞」
- 2006年・・・国土交通省「手づくり郷土(ふるさと)賞」
- 2010年・・・JTB交流文化賞「選考委員特別賞」
- 2012年・・・北海道地域文化選奨特別賞「ライオニズム大賞」
- 2013年・・・北のまちづくり賞「知事賞」
|